「・・・なんでまた君はそんなことを言い始めたんだい?ラウール」



彼は困った様に首をすくめた。



今日、友人が遊びに来た。
名をラウールと言う。それ以外は知らない。
別の友人に紹介され、話してみた所趣味思考があったため、友人となったのだが。
時々、恐ろしいほど困った事を言い出す。
今日もそうだ。
「だってあなたには、その実力があるじゃないですか」
「・・・君にしてはなかなかふざけたことを言うね。どこをどうねじふせたら、
出来ると言うんだい?」
「・・・・容姿端麗、頭脳明晰、他人よりずば抜けた運動神経、そしてその___カリスマ。
あと、読心術も付け加えましょうか?」
「コーヒーをもう一杯どうだい?こんどはフレーバー付きのヤツにしようか」
「結構です。話をそらさないでください」
「それをやるなら、この前僕が捕まえ損ねた怪盗の方が適役だと思うよ?
・・・・・・・どうしたんだ、ラウール」
怪盗、というワードに彼の目の前の青年は、どきりと身をすくませた。
「・・・・・あのスピカというこそ泥ですか。技術的には甘いと思いますけど」
「・・・・・君もそう思うかい。まあ、大胆不敵ということではいいセン行ってるが」
「なのにあなたは、ちっぽけな会社の社長をしている。
その会社を巨大にするのも、あなたには思うままだと言うのに」
「あのね、ラウール。君も人の事言ってられる場合じゃないだろ。
君にも実力があると、僕は思うんだが」
「うるさい部下どもの面倒をみるだけで、精一杯ですからね」
彼はコーヒーのおかわりを要求した。
「僕がそれをしないのはね、ただ単に面倒なだけだからだよ」



「戯言だろ______世界征服をしようなんて」