その日、彼等はいつも通りに一緒に過ごしていた。



その日は、穏やかだった。
『天災』と名高いコンピュータークラッカー、古神一春は、隣人の稲葉とそのまた隣人の 
イギリス人、アラン・クロードと一緒に稲葉の家でのんびりしていた。
一春は稲葉が従兄弟から借りて来た『ペーパーマリオRPG』をプレイしていた。
疲れたのでゲームを一時中断し、立ち上がる。首がごきごきとなった。
側に置いてあったティーカップに口をつけると、お茶は冷たくなってしまっていた。
お茶を入れようとしたら、紅茶の茶葉がきれてしまっていたので、
ちかくのお店まで歩いて買いに行く事にした。
稲葉とアランは、何かを楽しそうに話している。どうやら、喋るぼろ雑巾の話らしい。
話に夢中になっているので、一春は声だけかけて出て行く事にした。



十分後。
帰って来てみたら、アランと稲葉が口喧嘩をしていた。
稲葉が叫ぶ。
「異議あり!」
アランが叫び返した。
「却下ァ!」
どん、とテーブルに拳が打ち降ろされた。
テーブルの上の華奢なティーカップとポットが、カチャッと音を立てる。
二人とも某裁判ゲームにハマっていた事を、一春は今更の様に思い出す。
「なにやってんだよ・・・・二人とも」
二人は一春に気づくと、マシンガンのごとく喋り始めた。
「聞いてよ一春ちゃん!アランさんがね、目玉焼きにウスターソースかけるのはおかしいって!
ケチャップの方がおかしいよね!?」
「何を言うんだ、ショウ!うすたぁそぅすなんかかけたら、目玉焼き本来の味が、
台無しじゃないか!」
「ケチャップなんてあんな甘ったるいもの、目玉焼きにかける方がどうかしてますよ!」
口角泡を飛ばすとは、まさにこの事である。
「一春ちゃんは、何を目玉焼きにかけて食べるんだい!?もちろんウスターソースだよね!?」
「ケチャップに決まっているだろう!」
そして_____二人は一春の顔をじっと見つめた。
「・・・・塩コショウ」
彼等はむせび泣いた。





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