ある日の朝に、電話がかかって来た。
「ハイもしもし稲葉ですが」
「あ、稲葉の兄貴!?オレなんだけど!」
「あれ、一春ちゃん?どうしたの?」
一春ちゃんは俺のお隣に住む女の子である。
茶色のくるくる頭をばっさりとショートカットにしている。顔立ちも可愛い
のだが、いかんせん口が悪い。
職業はコンピューターのことならなんでも出来るということで、
コンピューターの何でも屋さんだ。
年齢は14歳なのに、中学校には通っていない。
甘いマスクの怪しげな探偵にくっついていつも楽しそうになにかやっている。
確か今は、探偵にくっついて名古屋まで行っているはずだ。
「兄貴んちって、ビデオってあったっけ!?」
「あー・・・DVDならあるけど・・・?」
事は緊急を要するようだ。かなり声が焦っている。
「お願いがあるんだけど!」
「なんなんだい?この前一春ちゃんにはお世話になったからね、なんでもするよ」
風邪でぶっ倒れて、三日間ほど助けてもらったというなんとも情けない話であるが
まあとりあえずお世話になったからには恩を帰さないと!
「何を録画してほしいの?」
セサミストリートなんだけど!録画予約し忘れて!」
なにゆえ、14歳の天才コンピュータークラッカーが、朝九時から始まる
パペットだらけの某英語幼児向け番組なんぞを見ているのでしょうか。
俺にはわけが分かりません・・・・。
「頼む!毎週見てるから、どうしても見逃したく無いんだ!」
「名古屋にもテレビはあるんじゃないか?」
「それが、今オレのいる所、絶海の孤島なんだ!
だから電話くらいしか無くて!」
「何があったんだい一春ちゃん!」
名古屋のグランドホテルではなかったのか。
「なんか、黒服の怪しいオッサン達に拉致られて!」
「警察呼ぼうか?」
「大丈夫!今所長が戦ってるから!と言うわけでヨロシク!
おみやげにういろう買ってくるから!」


がちゃ。
電話が切れた。
「大丈夫なのかな・・・・・・」
つーか、そういうヤバい状況で録画し忘れたテレビ番組のことを考えている
あなたがお兄さんには理解できません・・・・・。







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